創業100年の印鑑店で働く、ちょっと風変わりな“黒白社員”の物語

□ ぶっちは看板猫じゃない、「店長」なのです。

石原印房には、社員が一人…いや一匹、います。
その名もぶっち店長
ふわふわの黒白の毛並みに、鋭くもやさしい目つき。
彼は、創業100年を超えるこの印鑑店で、毎日を一緒に過ごしています。

初めて見た方はたいてい、「あ、猫がいる」と笑顔になります。
でも、ぶっちはただの“癒しの存在”ではありません。
このお店の空気を整える、大切な“雰囲気担当兼巡回責任者”なのです。


□ 朝一番の仕事は、店内の“気配確認”

開店準備を始めると、ぶっちは「おはよう」と言わんばかりにやってきます。
スタッフがシャッターを開ける音に耳を立て、
印材棚、受付カウンター、作業机の下…と、決まった順番で歩き回ります。

私たちにはわからない微細な変化や“気配”を察知しているのか、
ぶっちがじっと一点を見つめると、なんとなくその場所が気になる。
まるで「ここ、ちょっとホコリ溜まってるぞ」と言われているような気がするから不思議です。


□ 手足を伸ばして、のびのびリラックス

この日のぶっちは、スタッフに抱えられて両手(両前足)をぐーっと伸ばすポーズ。
どこかドヤ顔にも見えるその姿は、「今日も営業いくぞ」という意気込み…かもしれません。

でも、しばらくすると棚の上でお昼寝。
陽の差す時間帯は特に気持ちよさそうで、ぐるぐると喉を鳴らして丸くなります。
その姿に、お客様がふと足を止めて見つめ、笑い、そして少し心がほどける。

それだけで、ぶっちは“立派なスタッフ”なのです。


□ 実は…ぶっちとの出会いは偶然でした。

今でこそ“店長”の風格を漂わせるぶっちですが、
出会いは本当に偶然でした。

ある日、店舗の裏に小さな黒白の子猫がふらっと現れました。
警戒心が強く、なかなか近寄らせてくれなかった彼に、
スタッフみんなで少しずつ声をかけ、水を置き、餌を置き…
気がつけば「ぶっち」と名前をつけて呼ぶようになっていました。

正式に“家族”になったその日から、
ぶっちはこの店舗の空気にすっと溶け込み、
まるでずっと前からそこにいたかのように、日々の業務を見守るようになったのです。


□ 印鑑店の猫、という存在

石原印房では、実印・銀行印・法人印を手彫りで制作しています。
一級彫刻士による完全手彫り。
お客様の人生に関わる印鑑を、一つひとつ心を込めて仕上げます。

そんな空間に、ぶっちがそっと座っている。

それだけで、お客様との距離が少し縮まり、
「このお店なら安心してお願いできそう」と言ってくださる方が増えました。

ぶっちは“営業”も“接客”もできません。
でも、この店が持つ温度や空気を、お客様に伝える存在として、かけがえのないパートナーなのです。


□ ぶっちとお客様の、やさしい物語

以前、小学生の女の子を連れたご夫婦がご来店された時のこと。
「娘の銀行印を作ってあげたい」と、丁寧に話してくださったそのご両親の横で、
娘さんはぶっちをじーっと見つめていました。

するとぶっちがすっと近づき、娘さんの足元で“ちょこん”と座る。
びっくりしていた彼女が、「この猫、なんて名前なんですか?」と聞いてきました。

印鑑の話もそっちのけで、ぶっちの話でしばらく盛り上がり、
お渡しの時には「ぶっちに会えてよかったね」と笑顔で帰っていかれました。

印鑑を通して「家族の記念日」をお手伝いする私たちにとって、
あの瞬間はとても大切な思い出です。


□ 緊張の空間を、ぬくもりある場所に変える力

石原印房は、いわば「節目に訪れる場所」です。

結婚、住宅購入、会社設立、相続、退職…。
人生の大きな局面で、印鑑が必要になるとき、
お客様は少なからず緊張や不安を抱えています。

そんなとき、ぶっちが店内をゆったり歩いていたり、
丸くなって寝ていたり、ふと伸びをしていたりする姿は、
無言のうちに「ここは安心して大丈夫ですよ」と伝えてくれている気がするのです。


□ ご来店の際は、ぜひぶっちにもご挨拶を

もちろん、ぶっちは気まぐれです。
奥の棚でぐっすり眠っている日もあれば、
外の風を眺めている日もあります。

でももし、あなたが石原印房にいらしたときに、
ぶっち店長がふと現れてくれたなら、
それはきっと「いいご縁」の証かもしれません。


📍 群馬県みどり市大間々町大間々965番地
🕒 平日・土曜営業(日祝休)
📞 印鑑のご相談も、ぶっちとの触れ合いも、大歓迎です